Digital Marketing Institute | デジタルマーケティング研究機構

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第一回東北セミナーレポート(2)「公開!ウチのソーシャル活用術~社内調整から具体的活用方法まで~」 イベント報告

  • 掲載日:2011年12月14日(水)


Facebookページを開設している企業のソーシャルメディアへの取り組み



Web広告研究会初の仙台セミナー、第二部は「公開!ウチのソーシャル活用術~社内調整から具体的活用方法まで~」と題し、サントリーホールディングス株式会社の坂井康文氏、日本航空株式会社の秋山奈央氏、伊藤ハム株式会社の関澤昌弘氏の3者がそれぞれの企業のソーシャルメディアへの取り組みを発表していった。


伊藤ハム:ソーシャルメディアで潜在層へとリーチする


伊藤ハム株式会社 関澤 昌弘 氏
伊藤ハム株式会社
関澤 昌弘氏


 伊藤ハムは、2010年1月に社内有志でソーシャルメディアマーケティングの必要性について情報共有を開始。2011年3月下旬にGREE公式アカウントを、4月にFacebook公式アカウントを開始している。また、2011年11月現在でFacebookの「いいね!」を1万5,000人強のファンから獲得している。
 コモディティ化されているハム・ソーセージ業界において、低価格な商品へ流れるのではなく、長い関係性を築くことを目的として、これまでアプローチできない潜在層へリーチし、最終的には店頭でのブランド指名買いが起きることを目的としてソーシャルメディアを展開しているという。また、GREEを選択した理由は、「アクティブな主婦層が多く、主婦の関心が高いウインナーの飾り切りやデコ弁などでコミュニケーションを図ることが可能と考えた」と関澤氏は話す。競合他社の大手食肉メーカーに先行してFacebookページを作成し、優位性を獲得していることも特筆すべき点だ。

伊藤ハムでは、「ハム係長」というキャラクターを使って顧客とのコミュニケーションを展開しているが、ファンがハム係長の絵文字を作ってくれたり、YouTubeでクレイアニメのようなハム係長の動画を公開してくれたりするなど、キャラクターを通じたコミュニケーションも生まれている。また、Facebook上で味の素とのコラボを行ったり、4コマ漫画を展開したりするなど、さまざまな取り組みも行われている。

ソーシャルメディアマーケティングで気をつけていることとして、関澤氏は「企業がマーケティングを行うことを目的とする場ではなく、生活者が主役であり、マーケティングさせていただくという姿勢が大切」だということ、「おもてなしの気持ちやコンシェルジュ的な姿勢を心がけて“友達になりたい”と思われるように心がけて運営している」ことを説明した。また、ソーシャルメディアマーケティングは人間マーケティングであるとする関澤氏は、「企業人としての意識を持ち、1人の人間、社会人としての対応をすることが重要」だと話している。


 
日本航空:会社ではなく人を感じてもらう


日本航空株式会社 秋山 奈央 氏
日本航空株式会社
秋山 奈央氏

日本航空(JAL)は、ブランド再構築にあたり2011年4月に新たなロゴマークを採用、ブランドイメージの回復と新ブランド浸透のための双方向コミュニケーションが必要だと考え、2011年1月からマーケティング本部とWeb販売部が中心となってプロジェクトチームを立ち上げ、Facebookページ開設に取り組んだという。Facebookページの目的としては、ブランド訴求と浸透、ファンの醸成、オウンドメディア連携も含めたクロスメディア戦略の3つがあったが、開設後には新生JALに対する社員の意思共有にも効果があったという。

日本航空のFacebookページの特徴は「顔が見えること」だと秋山氏は話す。社員が実名で登場することで発言責任を明確にし、会社と人ではなく、人と人のコミュニケーションを意識しているという。また、「リアルタイム性」や「オリジナルコンテンツ」にもこだわりを持ち、旬の情報や季節感、ガイドにはない空港スタッフのおすすめ情報なども盛り込まれ、ファン参加型のイベントも開催している。

Facebookページを運営して学んだこととして秋山氏は、(1)声を聞くこと(関係を築くこと)(2)会社ではなく人を感じてもらうこと(3)プライベートな舞台裏情報が共感を呼ぶこと(4)旬の話題や写真などの投稿タイミングがあること(5)正面からぶつかってコミュニケーションを取ること、という5つをあげている。特に、最後の正面からのコミュニケーションでは、1985年8月12日に起きた御巣鷹の事故について、賛否両論はあったが整備責任者のコメントを今年の8月12日に掲載し、伝えたいことを誠実に正面から話すことで顧客から良い反応と共感を得ることができたと、経験談を話してくれた。


 
サントリー:自社メディアとソーシャルメディアで接点を拡大


サントリーホールディングス株式会社 坂井 康文 氏
サントリーホールディングス株式会社
坂井 康文氏

サントリーホールディングスでは、2006年からブログに取り組み、8つのブログを運営。体験型のブロガーイベントも行っている。Twitterアカウントは7つで、mixiでは2つのアプリを運営し、mixiページも開設。2011年6月にはFacebookページも開設されている。ソーシャルメディア取り組みの目的としては、「自社メディア+ソーシャルメディアで接点拡大」「早めに始めることによるノウハウ蓄積と社内理解促進」「長期的で良好な関係作りとネット上の人格作り」「自社の状況と世の中の変化の理解とソーシャルメディアの付き合い方の考察」などを坂井氏は挙げた。

Facebookページでは、金曜日の帰宅時にグラスの写真付きで「今週もお疲れ様」といったコメントを出したときや、羽田空港の「サントリーハイボールガーデン」の紹介などが好反応だったという。一方で、社会貢献などの企業活動にもコメントは付くものの、その数はそれほど多くはないという。しかし、「これらも情報発信すべき重要な活動であるため、コメントが比較的少なくても今後も続けていくべきと考えている」と坂井氏は話す。また、メールマガジンでは反応が高いキャンペーン関連の情報も、Facebook上では反応が薄いなど違いが見られるという。

ソーシャルメディアを運営するうえで、サントリーではソーシャルメディアポリシーの掲載が重要と考え、各ページのソーシャルメディアボタンの下にポリシーを表示させるリンクを用意しいている。また、社内向けには、マーケティング活用ガイドラインを広報部で整え、個人利用基準を総務部などと相談しながら今後徹底する予定だとしている。


ソーシャルに社員が参加するときには
お客様の場であることを理解する


続いて、3者によるディスカッションが行われ、まず秋山氏が「ユーザーへのコメントバックをどのようにしているのか」と問いかける。これに対して関澤氏は「ウォールへのコメントはすべて回答している」と答えている。テレビでハム係長が取り上げられたときは、数百件のコメントが寄せられたそうだが、それにもすべて答えたようだ。ポジティブな意見が多いが、ネガティブな意見に対してはやり取りを行った後、メールアドレスを伝えて個別に対応しているという。また、坂井氏は「すぐに回答できる質問には答えている」と話し、Facebookページに関しては「1問1答だとうるさい感じがするので、ある程度同じ質問が溜まってからまとめて答えることもある」と話す。

東北セミナー第二部講師陣

関澤氏からは「中長期的な目的でソーシャルを使っているが、短期的な販売促進にはつながるのか」という質問がされた。これに対して秋山氏は、「現状では、舞台裏を織り込んだ形での販促は一部実施しているが、よりダイレクトなお得情報や販促は今後の検討課題」と話す。また坂井氏は「答えがない領域でいろいろと考えているが、ソーシャルメディアはこれまでのキーマンやオピニオンとの付き合い方と同じだと思う。長期的な視点で今後良い影響が出てくるものと捉えている」と答えている。これらの回答を聞いた関澤氏は「やはりソーシャルを短期的に直接の売上へつなげるのは厳しく、長期的なブランド・ロイヤリティ作りに特化していると思う。しかし、そのうちにコマースと連携させることも視野に入れていきたい」と話す。

最後に坂井氏は「Facebookページなどで、社員が“いいね!”やシェア、コメントを使うことは是か非か」と問いかける。これに対して秋山氏は「開設当時からその点は議論してきたが、“いいね!”は社員も率先して行うようにして、コメントは控えるようにしている。社員が書き込んでしまうと内輪盛り上がりに見えてしまうため、お客様の場であることを社員に理解してもらっている。シェアについては、機能が変わったため、公開設定などをきちんとして自己責任で行うようにしている」と話す。また、関澤氏は「現在検討中で年内には明文化しようとしている。原則として、社員のコメントはやらせに見えて不快に思われる方もいるので書き込めない。シェアについては考えていなかったが、今後検討してルールとして追加していきたい」と答えた。これらの回答に対して「サントリーも日本航空と同じだ」と坂井氏は語り、「徹底は難しく、たまに社員っぽい書き込みがあった場合は、本人に連絡をとって削除することもある」ということも明かしてくれた。

第二部では、Twitterからの質問に対する回答も行われ、組織体制、開始時期にコンサルタントを使ったかどうか、広告費、効果測定方法など、来場したWeb関係者が気になる質問に3者がそれぞれの企業の立場で真摯に答えていた。


(C) 社団法人日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会 2011
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