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「マーケターは消費者に感動を与えられるCXデザイナーであるべき、デザイン思考のマーケティング」 2015年10月23日開催 月例セミナー 第2部

大量生産、大量消費の時代から移り変わり、消費者により良い顧客体験を提供するカスタマーエクスペリエンス(CX)がブランド体験において重要視されつつある。いま、消費者の行動変化にあわせて、マーケターにはCXの意識とデザイン思考の適用が求められている。Web広告研究会の10月月例セミナー第二部では、「変わり続ける顧客――カスタマーエクスペリエンスの肝とは――」をテーマに、優れた顧客価値を創造するCXが語られた。

カスタマージャーニーを2軸で描く


日本オラクル株式会社
エンタープライズソリューション統括本部
エンタープライズ・アーキテクト本部
担当ディレクター
田澤 孝之氏

第二部は、「変わり続ける顧客――カスタマーエクスペリエンスの肝とは――」と題し、日本オラクルの田澤氏が登壇した。

田澤氏は、「マーケティングマネジメントとは、標的市場を選択し、優れた顧客価値の創造、伝達、提供を通じて、顧客を獲得、維持、育成する技術である」というフィリップ・コトラー氏の言葉を引用し、マーケティングは顧客を獲得するだけでなく、維持・育成する必要があると強調する。

田澤氏はある調査データから、現代のスマートフォンユーザーは、1日に約100回自分のデバイスを操作し、46%が毎日商品やサービスを検索し、65%の消費者がブランドやメーカーと直接取引を期待していることを示す。続けて現代の消費者は、新たに「Search(常に知っている)」「Surf(常につながっている)」「Share(常に共有している)」という3Sの行動を取っており、カスタマージャーニーを「BUY(購買)サイド」と「OWN(所有)サイド」の2軸で描いていくことが、カスタマーエクスペリエンスの基本だと説明する。


BUYサイドとOWNサイド、2つの軸でカスタマージャーニーを描く

複雑化してきた購買者の意思決定プロセス

消費者の行動は複雑化しており、たとえば、2000年ごろまでであれば、消費者は自動車を購入しようとしたとき、マスメディアなどで情報に接触し、興味があればディーラー(販社)に直接行ってカタログを入手したり、試乗したりしていた。自動車メーカー(OEM)は、広告費を投入しマスメディアに広告を投下し、販売をディーラーに任せて、ディーラーマネジメントシステムをしっかり作っておけばよい時代だった。

一方、現在の自動車購入までのカスタマージャーニーは非常に複雑化している。インターネットによってチャネルが増え、前述の3Sの影響が年々増えたことで、顧客の購入決定プロセスに自動車メーカーや販社での営業活動が与える影響が少なくなり、ネット上の評判やクチコミの影響が大きくなってきている。ブランドやメーカー側は、過去と現在のカスタマージャーニーのギャップを捉えて対策を行うことが重要になってくる。消費者の購入意思決定プロセスが複雑化するなかで、ブランドやメーカーが消費者の行動をコントロールすることは難しい。

自動車購入のカスタマージャーニーの例。昔と比べてWebやソーシャルなどのチャネルが増えより行動が複雑化している

電通発表の「2014年日本の広告費」は6兆1,522億円となり、そのうち、インターネット広告費は1兆519億円で、テレビを除くマス三媒体の広告費を抜き、まだ2倍の開きがあるもののテレビの広告費にも迫る勢いだ。ブロードキャスティングからナローキャスティングへ、マスマーケティングから個別マーケティングへ、変化が起きていると説明する田澤氏は、デジタルツールを活用したマーケティングにシフトしていると説明する。

顧客満足度とCXへの取り組みの指標となるNPS

CXを計測する方法として、田澤氏はブランドのスコアリング手法であるNet Promoter Score(NPS)を挙げる。NPSは、ガートナーもCXの指標の1つとして示しており、メーカーやブランドのNPSを公表した「NPS Benchmarks」もある。日本国内でも近年、CXの取り組みにNPSを活用する企業や、NPSサービスを提供する企業が登場している。

NPSは、「あなたはこの会社(製品、サービス)を友人や同僚に勧めたいと思いますか?」という11段階の究極の質問のうち、Promoter(推奨者)の割合からDetractor(批判者)の割合を引いたスコアで算出される

優れたCXを提供し、いかに顧客をブランドにとどめておくかが重要だが、二度と使わないといったユーザーをなくすことは非常に難しい。このようなBad eXperience(BX)は、前述の2軸のうち、OWNサイドで起きることが多く、購入後のサービスやアフターケアが重要になる。

しかし、BUYサイドとOWNサイドの2軸で顧客満足度を上げられているケースは少ないと田澤氏は話す。期待した通りのより良い経験をしたことがある消費者は1%で、良い顧客体験を得た場合は、より多くのお金をブランドに支払う割合が86%である一方、よくない体験をした場合に、競合他社に乗り換える割合は89%になるという調査もある。NPSの高い、アマゾンやアップルのビジネスデザインを見習うことも、ときには重要だ。


RightNow Customer Experience Impact Reportより。一度離れた顧客を取り戻すことは難しい

顧客を獲得するだけでなく、効率的に維持していく

カスタマージャーニーマップは、企業とのやり取りと関係性を通じて、顧客のプロセス、ニーズ、認知を視覚的に表現するもので、決まった描き方はない。田澤氏は、オラクルでは、顧客指向(CC)へのトランスフォーメーションを重視し、CXデザインを実行するアプローチを勧めていると話す。単にカスタマージャーニーマップを描くだけでなく、顧客に新しいエクスペンスを与えるためのイノベーションを探求する必要があり、デザイン思考のフレームワークを活用して、顧客視点による洞察から、事業価値や実現手段を評価することも重要だ。

オラクルでは、これらを実行するためのワークショップも提供しており、興味があれば、問い合わせて実際に体験することも可能だという。

カスタマーエクスペリスジャーニーマッピングワークショップの概要

CXは、A(Acquisition:顧客獲得)+R(Retention:維持)+E(Efficiency:効率)だと話す田澤氏は、NPSなどの測定法でCXを改善するための施策やアイデアが生まれやすくなっていると話す。

CX = Acquisition + Retention + Efficiency

大量生産・大量消費の時代は、新規顧客の獲得に力を注いでいればよかったが、日本市場が縮小し、安価なBtoC製品の生産競争力が低下していくなかで、これからは既存顧客の維持を効率的に実行することが企業成長のための重要施策になってくるという。

また、マスマーケティングの時代よりも、ハッキリとしたKPIを測れるようになってきているため、どこに何を行うかが明確になり、NPSを上げたり、リードあたりの獲得単価を下げたり、またはコンバージョンを上げてチャネルの最適化を行うなど、さまざまな数値を定量化するメリットが生まれてきているという。

また、田澤氏はCXのX(eXperience)の代わりに、E、S、L、Dという次の4つを当てはめることもできると説明する。

・Customer Engagement
・Customer Satisfaction
・Customer Loyalty
・Customer Delight


4つのCX

日本ではまだ、Delight(感動)のなじみが薄いが、今後はDelightを意識していくことが重要だと、田澤氏は最後に次のように語った。

「感動を顧客に与えられるCXのデザインを行ってほしい。マーケターは、デザイナーであり、デザイン思考で考える必要がある。売ることが難しくなってきた時代の中で、顧客に真摯に向き合って感動を与えられるようになってほしい」(田澤氏)



2015年10月23日開催 月例セミナー第1部レポート

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