Web Advertising Bureau | Web広告研究会

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「広告や訴求もモノづくり、ホンダの技術力・想いを世の中へ伝えるプロモーションの裏側」2015年4月10日開催 第8回東北セミナー 第3部 イベント報告

  • 掲載日:2015年5月13日(水)
  • 委員会・ワーキンググループ:東日本大震災・被災地支援プロジェクト

カンヌライオンズをはじめ数々の広告賞を受賞したホンダの「Sound of Honda/Ayrton Senna 1989」。アイルトン・セナのドライビングを体験できるという同プロモーションの裏側を支えたのが、ホンダの技術力だ。東北セミボラ第三部では、開発現場の持つ技術力をどのようにサービスや企画につなげていったのか、本田技研工業の野川 忠文氏が現場の想いを語った。

さまざまな情報を最適化してドライバーに伝えるインターナビ


本田技研工業株式会社
グローバルテレマティクス部
野川 忠文氏

「Sound of Honda/Ayrton Senna 1989」は、ホンダのカーナビ「インターナビ」のWebサイトで公開されたプロモーションコンテンツだ。

1989年に鈴鹿サーキットでアイルトン・セナが記録した当時のF1世界最速ラップを光と音で再現した「Sound of Honda/Ayrton Senna 1989」

インターナビは、1998年ごろからインターネット対応ナビゲーションが登場するなか、2002年に双方向通信型のナビとして生まれている。Telecommunication(通信)とInformatics(情報工学)を表すテレマティクス技術が使われており、情報をクルマと人と社会をつなげ、安全でクリーンなモビリティ社会を実現すると野川氏は説明する。

「開発の人間でプロモーションを行ってきたわけではないが、開発を行いながら訴求にも関わるチャンスがあったのでお話ししていきたい」と話す野川氏は、インターナビのサービスを立ち上げへの想いとして、「世の中から渋滞をなくしたい」「未然に災害から回避できないか」「もっとドライブを楽しくしたい」「もっとカーライフを豊かなものにしよう」を挙げる。

インターナビのサービス会員は2015年3月時点で235万人、世界初・業界初の技術を導入しながら進化を続け、さまざまなデータを最適化してドライバーに提供しているという。たとえば、2003年10月から開始された「フローティングカーシステム」では、インターナビ搭載車のフローティングカーデータ(走行データ)を会員同士で共有し、リアルタイムの交通情報をもとに最適なルートを案内する。


会員同士で収集した交通情報をもとに最適なルートを案内

また、2010年からは通信機をすべてのインターナビに標準装備するだけでなく、通信費を無料サービスする「リンクアップフリー」を提供することでデータ収集量が飛躍的に伸び、2013年には約3億km/月、約130億レコード/月の情報が集まるようになったという。現在はこれらの道路交通情報を考慮し、より高い精度で最適なルートを見つけることができるようになっている。

しかし、こうした技術は一般消費者にはなかなか伝わりにくい。そこで日本中から集められた膨大な走行データを利用していることをアピールするため、ホンダでは「INTERNAVI REALIZATION」を立ち上げ、リアルタイムに収集される情報を黒い画面上にマッピングするだけで日本地図が見えてくるような仕掛けを行っている。


走行データをリアルタイムに映像へ反映した「INTERNAVI REALIZATION」

「余計な説明なしに見せて、何かすごいと思ってもらって、最後にインターナビの情報であることに気づいてもらえればよいと考えた」(野川氏)

気象情報や防災・減災情報も提供

インターナビでは、ドライブに必須な交通情報だけでなく、気象・防災・減災情報も提供している。2004年にインターナビウェザーで気象情報を提供し始め、2007年にはゲリラ豪雨などにも対応し、地震や凍結などの情報も配信している。

「2004年の新潟中越地震のときに、災害に遭われた被害者を1人でも救いたいと考えた」と野川氏が話すように、震度5弱以上の地震が起きたエリアにインターナビを搭載した車が入ると、そのクルマの位置情報を事前に登録した家族のメールに知らせるサービスを行っている。さらに2014年1月からは、吹雪で視界が悪くなるホワイトアウト予測などの情報も提供している。

インターナビのデータは道路行政でも活用されている。2007年にホンダは埼玉県と共同で走行データから急ブレーキのポイントを抽出して地図にマッピングし、急ブレーキの多発地点を調べることで、原因となっている植栽を枝切りして見通しを良くしたり、路面表示による速度抑制の注意喚起などの対策を行っている。これらの道路施策を行った後、再びインターナビで急ブレーキポイントを抽出すると、急ブレーキ回数が約7割減少したといい、他県でも取り組みを始めているという。


走行データから急ブレーキポイントを抽出して安全対策を実施

災害時の活用として、2004年の新潟県中越地震で防災科学技術研究所からインターナビのデータ解析依頼を受け、共同研究によって通行止め箇所などを調べている。また、2007年の新潟中越沖地震や2008年岩手宮城内陸地震の際にも、通行可能な道路情報を示した「通行実績マップ」の配信を地震の翌日から行っている。

これらの取り組みは、2011年3月11日の東日本大震災でも活かされた。地震直後にシステムが稼働していることを確認したホンダでは、大災害を目前にもっとやれることはないかと議論し、まず通行実績情報をGoogle Earthで扱えるKMZファイルで提供して、世界中のだれでも利用できるようにしたという。


通行できる状態にある道路はどこか、実際の走行データをもとにマッピング

「インターナビのフローティングカーデータは、ホンダの資産でもあるし、お客様の情報でもある。それを外部に出すことに議論はあったが、ホンダとしてこの災害に対応したいと考えて、翌日にはKMZファイルを配信するようにした」(野川氏)

震災当時、3月14日には情報が「Google Crisis Response」でも提供され、各省庁や研究所などのさまざまな機関で活用されている。

インターナビのさまざまなプロモーションの取り組み

ホンダでは、電通とともに「dots by interanavi」というプロジェクトも行っている(コンテンツ公開は2014年9月25日に終了)。これは、前述のインターナビ立ち上げの想いを伝え、新しいサービスを作っていくために作られたもので、dotsは「design our transportation story」の頭文字を取ったものだ。

2011年の東京モーターショーの展示から始まったdotsプロジェクトは、インターナビの優位性や利便性を示すようにリアルタイムデータなどを可視化した動画をWebサイトやアプリなどで提供している。


交通情報だけでなく、天気などさまざまな情報を可視化

また、東日本大震災から20日間のフローティングカーデータをマッピングした「CONNECTING LIFELINES」では、震災後に道がつながっていく様子を動画で示した。その他、簡単にドライブの様子を録画して動画を作成できるアプリ「ROADMOVIES by internavi」も提供している。

2014年のカンヌでのチタニウム部門のグランプリをはじめ、数々の賞を受賞した「Sound of Honda」は、Webサイトアプリも公開されている。

「厳密にはインターナビとは関係がないが、当時ホンダはF1で初めてテレメトリーシステムを導入し、エンジンの回転やシフトチェンジを通信で送ってリアルタイムに解析していた。そのデータを使って、アイルトン・セナが鈴鹿サーキットで出した最速ラップを再現した企画がSound of Hondaで、データを使って表現することはインターナビと共通していると思う」(野川氏)

日本国内でサービスを提供していたインターナビだが、「HondaLink」という名前で海外展開も行っている。2013年6月からタイでサービスを開始したHondaLinkは、スマートフォンアプリなどを提供しており、アプリは日本よりもクルマが身近な存在である海外を意識したつくりやUXとし、クルマに愛着を持ってもらえるサービスとしている。


海外ユーザーのライフスタイルにあわせたアプリを展開

プロモーションでも、クルマへの愛着を意識したWebサイト動画が作られており、野川氏は「技術者なので作ったサービスの内容をもっと伝えたいとは思うが、もともと目指していた世界観を表している動画で、カーライフを豊かにすることが伝わると思う」と話す。

想いをもって開発した技術を世の中に共有する

2014年には、復興イベントの「MIYAGI POKERUN」の専用アプリを開発。チェックポイントを回りながら5枚以上のカードを集めてポーカーの手役を完成させるスタンプラリーアプリで、震災から3年経った復興の現在を体験しながら、地域が支援を受けるだけでなく、地元の手で再生する新しいビジネスのタネを植えることをコンセプトとして、開催中の参加者の動きも通行実績マップやdotプロジェクトと同様にビジュアライゼーションして表現していったという。

この試みは、「Yahoo! JAPAN インターネット クリエイティブアワード2014」にノミネートされている。「当初は、ホンダのテレマティクス技術を使って復興に貢献したいと考えてアプリを制作する予定だったが、ホンダがアプリを作るよりも、地元の企業に開発してもらうほうがビジネスの創出につながると考えた」と話す野川氏は、アプリコンテストを行って地元企業を選び、ソフトウェア会社や学生を集めて「Honda DNA Hackathon」を行ったと説明する。

「ホンダという会社は、想いのある人材がそれなりにいる。想いをもって開発したサービスを、想いを共有してともに発信できるモノを作ることが大事だ。開発はもちろん、広告や訴求もモノづくりなのだと、これまでの取り組みを通じて感じている」(野川氏)

第8回東北セミナー 第1部レポート

第8回東北セミナー 第2部レポート

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