Web Advertising Bureau | Web広告研究会

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DI. 横山隆治氏による「宣伝部をデジタル化するための考え方とテレビ視聴データの活用方法」 2016年6月27日開催 月例セミナー 第1部 イベント報告

  • 掲載日:2016年7月22日(金)

マーケティングのデジタル化が企業戦略として掲げられるなか、宣伝部はどのようにデジタル化していくべきか。Web広告研究会の6月月例セミナーでは、デジタルインテリジェンスの横山 隆治 氏が「宣伝部のデジタル化」をテーマに、宣伝部がデータ武装し、新たなプロジェクトに挑戦するための道筋を語った。

求められるのは箱作りではなく、マーケティングの再定義


株式会社デジタルインテリジェンス
代表取締役
横山 隆治 氏

「宣伝部はいかにデジタル化するのか ~データ武装する宣伝部のためのテレビ視聴データを考える~」と題した講演の冒頭、横山氏は多くの企業がデジタルマーケティング部を組織しているが、文字通り「デジマ=出島」となってしまい、広告・マーケティングの本丸にまで入り込めていないことが多いと指摘。宣伝部のデータ武装を前に、現在のマーケティング課題と潮流を指摘していく。

デジタルマーケティングは、オンライン上の施策だけに限ったことではない。本来の役割は、「リアル」「マス」「ネット」の3領域をデジタルデータで統合、マーケティングのデジタル化によって顧客の動線を最適化することである。

STP(Segmentation Targeting Positioning)や4P(Product Price Place Promotion)といったマーケティングの根幹まで、デジタルデータを活用したさまざまな施策が可能になってきているなか、企業はマーケティングを再定義する必要があると横山氏は話を続ける。単にデジタルマーケティング部という箱を考えるのではなく、スキルセットを定義し、人材を集め育成することが求められる。

たとえば、スマホのキュレーションメディアのスポンサード枠とテレビ番組の提供枠をどのように組み合わせればターゲット層に効果的なリーチができるのか、すぐにイメージできるような人材が必要であり、そのような担当者をどうやって育成するかを考えなければならない。マーケティングのデジタル化では、テレビとデジタルの両方を考え、シームレスに行き来できる人材が欠かせない。

現在のマーケティングの課題と潮流

現在のマーケティングの課題と潮流について、横山氏は「テレビCMなどのマス広告の認知と、ネットによる刈り取り施策の間がなく分離してしまっている」と話す。テレビCMで認知を取り、ネットで刈り取りするといったときに双方が分離しているが、デジタルデータを使って、マス、リアル、ネットの3領域で顧客動線を管理し、これらの間を埋めることで、マスとネットの両方を効率化できるという。

また、テレビとオンラインの役割とバランスについて、テレビCMのリーチの補完としてオンラインの効果は全体ではまだ小さいが、若年層に対してはオンラインで補完する必要があると説明する。人口減少社会のいま、テレビCMのフリークエンシーは、過少と過多に二極分化しており、特に人口の少ない若年層をターゲットとした場合は、デジタルによる補完が重要になる。

また、デジタル広告であれば、あるCookieに対して一定以上フリークエンシーを重ねる配信ができるため、テレビとオンラインの両方を組み合わせることで、適正フリークエンシーに近づけやすくなり、これによって認知効率を上げることができる。

テレビとWebの組み合わせによる態度変容

テレビCMとオンラインコンテンツを組み合わせ、ターゲットユーザーの態度変容をどのように起こすかも課題だ。横山氏は、ブランド認知や広告認知が目的であれば、テレビCM素材の流用でも効果は変わらないが、「ある特定のブランドメッセージの認知」「ブランド好感度」「購買意向」を向上させるためには、違う素材を組み合わせて化学反応を起こすことが必要だと話す。

テレビは最大公約数のメディアであり、ブランドの文脈で作られた15秒メッセージを伝える役割を急激に変えることは難しい。一方、オンラインのクリエイティブは、特定のセグメントに強く刺さるユーザー目線の文脈で作ることが可能だ。狙いを絞って配信もできるため、ユーザーの「自分事化」を促すためには、テレビCMだけではなく、オンラインとの相乗効果を醸成する必要がある。

また組み合わせ方や順番も大事で、横山氏は放送中止になった日清カップヌードルのCMを例に「テレビCMを流すと40~50代の7~8割に当たる。最初はオンラインに流して、ポジティブに評価する人たちの世論形成を先につくるという戦略も考えられた」と説明する。

マーケティングは受けて主体のタイミングへ

続けて横山氏は、マーケティングの課題として、送り手のタイミングで行ってきたキャンペーンを受け手のタイミングに変える必要があると話す。

たとえば、ビデオカメラのキャンペーンは、卒業式・入学式・運動会のシーズンに行われることが多いが、「ビデオカメラ」の検索キーワードの量は、一年中あまり変わらない。消費者側の需要は常にあり、送り手のタイミングだけで行われているキャンペーンの不自然さが目立ってきているという。

事前のプランニングからリアルタイム運用へ


横山氏は、マーケティングのプランニングが変化し、事前のプランニング実行からリアルタイムの運用へシフトしていくだろうと話す。

たとえば、1億円のマーケティング予算のうち、8,000万円をテレビ、2,000万円をデジタルに配分するとき、テレビは8,000万円分のGRPを投下すればいいなどと、ある程度使い方が決まっている。一方、デジタルの場合は、「ターゲット」「メディア」「フォーマット」など無数の選択肢があるため、デジタルの世界は予算がプランを決めることがない。

つまり、デジタルの世界は、最初からKPIなどの目標設定がなければ最適なプランニングができず、「最初から予算配分の話だけでマスとデジタルを語るのは、ナンセンス」だというのだ。あるKPIを達成するために最適なデジタル上のプランは何かを考え、そこから予算を決めなければ意味がない。

競合ブランドもさまざまな形で出稿している。ソーシャルメディアやメタデータで顧客動向や流行がわかるようになっているため、最初に決めたプラン通りに実行するやり方は効率が悪くなっており、そのようなとき、横山氏はよく「7:2:1」で議論するという。

・7割:既存メディアやマーケティング手法で効果が実証されているものに使う
・2割:新しい手法やメディアなど、チャレンジして効果を実証するために使う
・1割:消費者からの反応や競合の出稿に応じて臨機応変に使う


キャンペーンは、常に消費者との対話であり、競合との駆け引きでもある。横山氏は、「ベストなアロケーションは事前に決まるものではなく、株のように運用していかなくては、最大の効果は得られない。枠ものしかないといわゆる「損切り」ができない。運用型広告がここまで利用されるようになったのは、運用することで予算を最適化していけるからだ」と話す。

山を盛るよりも恒常的なコミュニケーションをする

続けての課題と潮流は、「山を盛るより谷を埋める」だ。キャンペーンを投入して山をつくっても、昔と比べて今は効果が減衰してくスピードが速くなっており、GRPを増やして山を盛るよりも、デジタル施策で恒常的に谷を埋める方がマーケティングコストを効率的に使えるという。

DMPこそ宣伝部が使わなくてはならない

ここ数年、デジタルマーケティングではDMPが注目のキーワードとなっているが、本来のDMPの目的は、CRMとブランディングコミュニケーションをつなぐことのはずだが、日本のDMPはCRMツールの機能拡張版にしかなっていないと横山氏は指摘する。

DMPは、潜在層にいる見込み客やまだデータ化されていない既存顧客を逆引き分析することで、新しいターゲットセグメントを作り出すために使うべきだという。そのためには、汎用のロジックを使うのではなく、マーケターの視点でオリジナルのオーディエンス拡張ロジックを作る必要がある。

ブランドごとからオーディエンスごとの配信へ

最後の課題として、ブランドごとの広告発注から、オーディエンスごとの広告発注にシフトすることが重要だと横山氏は説明する。

複数のブランドを展開している企業は、ブランドごとに出稿していると、結果的に自社内で競り合って入札キーワードやCookieの入札価格を上げてしまうことになる。そのため、バルクで掲載面やオーディエンスを買い、「このタイミングで、この掲載面に来たこのオーディエンスにはどのブランド広告のどんなメッセージが最適化か」といったように、プログラマティックに配信していく運用が求められる。

横山氏は、このようにユーザーに最適なタイミングでブランドコミュニケーションをしていくことがこの数年で求められるようになると話し、潜在層の新たなターゲットセグメントを作り、メッセージを届けるための「顧客創出」が宣伝部の役割になると説明する。

テレビCMを科学するためのデータ

宣伝部がデジタル化するためにはデータ武装が必要だと話す横山氏は、テレビCMの到達実態データを集める必要があると述べる。マーケティングダッシュボードを構築してリアルタイム運用を行い、インタラクティブ広告をユーザーの反応調査と認識し、データ収集分析を行うことが重要だという。

特にインタラクティブ広告については、ターゲットは想定するものではなく、「反応した人がターゲット」だと説明。広告出稿することで「大いなるユーザーの反応調査」を行っていると考えるべきだと、横山氏は話す。


テレビの到達実態に関しては、たとえばテレビの視聴実態はドラマと音楽番組では異なる。ドラマは視聴者の8割程度が番組の最初から最後まで見ているが、、音楽番組は自分が見たいアーティストだけを見るため最も多い視聴時間は極めて短かい。いろんな視聴者が入れ替わり立ち代り視聴している。同じ視聴率でも「視聴者数×視聴時間」の中身が違う。

これまで、番組によって視聴構造・定着率・クラスタが異なるということは、業界内であまり議論されてこなかった。しかし、テレビCMが高齢層を除くターゲットに届きづらくなったいま、このようなデータをしっかりと見て、視聴実態や到達実態を確認する必要が出てきたと横山氏は説明する。

また、番組内容によってライブ視聴と録画視聴の傾向に差があるため、CMに触れる機会がどれだけあったのかなども、データで確認して評価する必要がある。

若年層をターゲットにテレビCMを当てるのは、もはや非効率だと説明する横山氏は、若年層をターゲットにするなら、スポットCMの予算を深夜枠でもいいのでターゲット向けの番組買い取りに回し、番組を制作したほうが効率的だと話す。世帯視聴率が低いとしても、ソーシャルメディアなどを使ってターゲットがしっかりと番組に関わるような仕掛けを作る方が、効率的だというのだ。

一方で、テレビCMの初期到達の勢いは高いという。今後はテレビもプログラマティック・バイイングとなってくるだろうと話す横山氏は、広告主がテレビCMの初期到達の高さを活用して、オンラインで100~200GRPを買うようになってくると説明し、「今までテレビを使えなかったブランドがどんどんテレビCMを活用するだろう」という考え方も示した。

フリークエンシーは平均ではなく分布を見なければ意味がない

フリークエンシーについては、平均ではなくフリークエンシー分布を見なければ意味がないと、横山氏は話を続ける。前述のように、フリークエンシーが二極化していることに加え、平均にはゼロ回の視聴者が含まれていないためだ。

運用する際には、GRPを単に増やすとフリークエンシー過多の視聴者が増えてしまうため、フリークエンシー分布上で適正フリークエンシーにあたる視聴者比率がターゲットゾーンで最も多いところが、適正GRPの収めどころになるという。

また、GRPの投下が増えてしまいがちなのは、競合もテレビCMを出しているためであり、競合の出稿をリアルタイムにチェックし、競合の出稿の山にぶつけるのか、谷に乗じるのかといった戦略を考えるべきだという。横山氏は、「事前に最適なプランは決まらないと話したが、戦略を立てるためのデータは取れるようになっている」と話し、戦略的にデータを見ながら柔軟にGRPの投下を考えていくべきだと説明した。

たとえば、デジタルインテリジェンスではテレビCMの事前リーチ予想を算出し、目標のターゲットリーチを補完するために必要なデジタル広告の配信量を可視化するサービスを提供している。テレビCMの到達率をデイリーで可視化し、目標のターゲットリーチに達していない分をデジタル広告によって補完する。

また、ティービジョンインサイツの視聴率データでは、カメラとセンサーを使い「テレビの前に誰がいるのか」「画面を見ているのか」「どのような感情で見ているのか」というビューアビリティ・インデックスやアテンション・インデックスを取得できる。これによって、視聴者がどのような視聴環境にいるのか、何回目のフリークエンシーでアテンションが高くなるかなど、視聴実態に応じたテレビCMの評価が可能になる。

マーケティングダッシュボードを構築することによって、競合出稿をリアルタイムに把握し、さまざまな戦略を立てられるようになると話を続ける横山氏は、POE(ペイドメディア、オウンドメディア、アーンドメディア)を網羅した指標を時系列に可視化することで、SNSの書き込みなど、Web上の行動とテレビCMの関係性もチェックできると説明する。競合の出稿量やCM効果も観測できる。

また、インタラクティブ広告に反応したユーザーを調査することによって、想定するターゲットと乖離がないか、コミュニケーションプランは最適化だったかなどを判断し、リアルタイムに修正することも重要だと横山氏は話す。

クリエイティブ・テレビ・デジタルの3者一体

宣伝部が行うべき新しいデジタルマーケティングの1つは、ユーザーベースで広告を最適化することだと横山氏は話す。続けて、デジタルマーケティングを主導する新しいCMOは、ブランドマネージャーを経験し、DMPを駆使したブランド横断型のマーケティングの経験がある人材がなるべきだと指摘する。


テレビCMとオンラインのクリエイティブの違いを再認識することも重要だ。テレビCMは最大公約数のブランド文脈のコンテンツだが、オンライン動画はユーザーの文脈で作り、ターゲットセグメントごとに強く刺さらなければ意味がない。

視聴の質を含めたデータは、メディアの打ち方とクリエイティブの掛け算でできており、現在はデータを駆使することによって、どんなCMのクリエイティブを、どの時期に、どのようなコンテンツと一緒に流せば最も効果が出せるのか調べることもできるという。

これからの宣伝部は、データを使ってデジタル化し、ブランドマネージャーや広告代理店とコミュニケーションを取ることでテレビCMを最適化していくことが重要だと、横山氏は説明する。そのためには、広告宣伝部からインターネット担当を外に出すのではなく、クリエイティブ担当、テレビ担当、デジタル担当が3者一体となり、新しいプロジェクトにトライしなくてはならないと横山氏は話し、講演を終えた。


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